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【助成報告書】高知県立大学地域デザイン研究室すくも空き家ラボ

【助成報告書】すくも家の輪プロジェクト

HATA!チャレンジ助成プログラム2025 初めの一歩コース

◆活動概要

団体名:高知県立大学地域デザイン研究室すくも空き家ラボ
団体住所(本拠地):高知市
活動場所:宿毛市
採択金額:49,900円

<スケジュール>

現場に足を運ぶ「点」の活動と、文献調査や分析を行う「線」の活動を組み合わせ、着実にステップを進めました。

  • 2025年7月7日: 事業開始・第1回現地訪問(宿毛市)

  • 7月~9月: 文献調査・既存資料の整理

  • 8月27・28日: 第2回現地調査(ヒアリング調査の実施)

  • 10月~11月: 住宅地図を用いた事前調査・分析準備

  • 11月29・30日: 第3回現地調査(空き家実態調査)

  • 12月~1月: 調査内容の整理・分析・展示パネル作成

  • 2026年1月24日: 報告会の開催(場所:まちのえき林邸)

 

▶︎参加者・関係者の広がり

「まちの作戦会議」や報告会には、宿毛の過去・現在・未来を象徴する多層的な方々が集いました。

  • 地域住民(高齢層): かつての賑わいや当時の暮らし、商店街の歴史の語り部として。

  • 行政関係者: 環境課・都市建設課・商工振興課など、現在の施策と課題の共有。

  • 経済・商業団体: 真丁商店街協同組合、宿毛商工会議所元会長など、ビジネス視点での現状分析。

 

<実施事業概要> 
「すくも家の輪プロジェクト」活動概要学生が主体となり、宿毛市(中央・片島地区)の空き家調査と活用の可能性を探った

 ・プロジェクトの全体像期間: 2025年7月〜2026年1月(約7ヶ月間)
 
対象エリア: 宿毛市 中央地区・片島地区主な活動: 現地調査、ヒアリング、宿泊体験、報告会月別のアクションと成果時期活動内容得られた知見・成果

学生という「外の視点」かつ「若い世代」が宿毛に光を当てたことに対し、多くの期待が寄せられました。

「外からの視点が新鮮だった。若い世代がまちに関心を持ってくれるだけで心強い」 「一度きりで終わらせず、これからも継続して関わってほしい」

これらの声は、学生たちの活動が単なる調査を超えて、地域に「前向きな刺激」を与えたことを示しています。

▶︎ 計画の変更と工夫(深化のプロセス)

本プロジェクトの最も大きな成果は、調査対象の「解釈」を広げたことにあります。

  • 【変更前】 空き家の数や立地、物理的な状態の調査に特化。

  • 【変更後】 「まちの歴史・形成過程」に焦点を当てた調査へシフト。

  • 【理由と効果】 空き家は単なる「古い家」ではなく、まちの歴史の集積であると気づいたため。文献調査やヒアリングを強化したことで、空き家問題を都市形成の流れの中で立体的に理解することが可能となりました。

 
11月詳細な実態調査住宅地図を使い、丁目ごとの空き家数・分布を可視化。1月成果報告会(林邸)展示パネルで活動を共有。地域住民との意見交換で活用のアイデアを議論。
 
 

◆活動実施者の声

💡 3つの大きなポイント「現場」を知る:空き家改修の成功事例に学ぶ空き家を活用した「café&宿【海と鉄】」での宿泊体験を通じ、リノベーションが街の魅力に変わるプロセスを実体験しました。
 
「歴史」とつなぐ:街の成り立ちを紐解く地元の商店(さんごの吉良氏など)から昔の写真や話を提供してもらい、単なる「空き家」としてではなく、街の歴史の一部として課題を捉えました。
 
「対話」を広げる:学生と地域の交流活動の締めくくりとして「まちのえき林邸」で報告会を開催。学生の視点と住民の想いを掛け合わせ、未来の宿毛を考えるきっかけを作りました。
 
📝 まとめ本プロジェクトは、学生が空き家問題を自分事として捉えるとともに、地域住民と一緒に「これからの宿毛」を描くための第一歩となりました

◆助成を受けた感想

このプロジェクトを通して、空き家問題は建物の問題だけではなく、まちの歴史や人の暮らし、これまでの積み重ねと深く関わっていることを実感した。最初は「空き家が増えている」という課題に注目していたが、調査を重ねる中で、なぜその場所に空き家が生まれているのかを考えることの大切さに気づいた。
 現地調査やヒアリング、まちの作戦会議を通して、宿毛市で暮らしてきた人たちの思いや、昔のまちの様子を直接聞けたことは、とても貴重な経験だった。文献だけでは分からない話を聞くことで、まちをより身近に感じるようになった。
 また、この活動を通して、自分たちの卒業論文のテーマである空き家問題について、どのように調査を進めていけばよいのかを実践的に学ぶことができた。文献調査の進め方、現地での調査方法、ヒアリングの行い方、得られた情報の整理や分析の仕方などを、実際の活動を通して身につけることができたと感じている。
 地域の人たちと話しながら活動を進める中で、学生が地域に関わることの意味や、外からの視点が持つ価値についても考えるようになった。このプロジェクトで得た学びを、今後の卒業論文や、地域と関わる活動に生かしていきたい。

 

<個人の感想>

▶︎今回のプロジェクトを進めていく中で、これまで当たり前だと思っていた宿毛のまちの風景や歴史が、大きな魅力であることにあらためて気づくことができました。また、調査や報告会を通して、地域の人たちが宿毛市を大切に思い、あたたかく学生の活動を受け入れてくれていることを強く感じました。自分が育った地域について、外からの視点も交えながら考える貴重な経験になりました。今後もこの経験を生かし、宿毛市のこれからについて考え続けていきたいです。

 

▶︎今回のプロジェクトを通して宿毛市の空き家問題について研究していく中で、空き家は単に「使われていない家」ではなく、地域のさまざまな課題が複雑に絡み合った結果として生まれていることを実感しました。研究を始めた当初は、空き家をリノベーションして活用すれば地域活性化につながるという単純なイメージを持っていましたが、現実には所有者の意向や管理の問題、費用面、手続きなど、解決すべき壁が多いことを知りました。また、地域の方や関係者の声を聞きながら進める中で、相手の立場を理解し、信頼関係を築くことの大切さも学ぶことができました。
▶︎宿毛でのプロジェクトを通して、宿毛の魅力と地域資源を活かすことの難しさを実感しました。
県外出身でこの地域の外から来た立場だったからこそ、普段は当たり前に見過ごされがちな価値に気づくことができたと思います。
現地での活動を通して、空き家の増加などの地域の課題だけでなく、現地の方の温かさや人とのつながりに触れられたことがとても印象に残っています。
今回の経験を今後の研究や活動に活かしていきたいです。最後に、調査にご協力いただいた方々や現地の皆さま、本当にありがとうございました。

 

◆助成終了後の展望

本事業で得られた学びを生かし、来年度以降も卒業研究とあわせて、宿毛市を対象とした空き家に関する調査を続けていきたいと考えている。これまでに行ってきた文献調査や現地調査、ヒアリングの経験をもとに、空き家が生まれる背景や地域との関わりを、より深く掘り下げていく予定である。
 また、今後は地域デザイン研究室の新入生も活動に加わり、調査の視点や人数を広げながら取り組んでいきたいと考えている。これまでの調査で蓄積してきた情報や方法を引き継ぎながら、学生同士で学び合い、継続的な活動につなげていくことを目指す。
 さらに、調査にとどまらず、空き家を実際にどのように活用できるのかについても検討を進めたい。地域の人たちと意見を交わしながら、宿毛市に合った空き家の使い方や、小さくても実践できる活用の形を考えていきたいと考えている。今後も学生と地域が関わり続けることで、空き家をきっかけにした新たなつながりが生まれることを期待している。

◆HATA !コメント

総評:宿毛の「家」と「思い出」を未来へつなぐ、学生たちの挑戦

「すくも家の輪プロジェクト」を終えて、私たち財団としても、胸が熱くなるような思いでいっぱいです。

■ 宿毛市出身メンバーを核に、県内外の仲間と先生での挑戦ありがとう!

特筆すべきは、学生たちが活動を通じて「空き家は単なる物理的な箱の問題ではない」という本質に辿り着いた点です。空き家は、地域の歴史、産業の変遷、そして人々の家族観の変化が形となったものです。 少子高齢化が加速する地方都市において、空き家問題は一刻の猶予も許されない喫緊の課題です。しかし、だからこそ「早く取り掛かる」と同時に、今回のように「地域の文脈(歴史や成り立ち)」を丁寧に紐解くプロセスが不可欠です。

<空き家を学ぶなら、自分の生まれたまちのことを調べてみたい>

そういう想いからの今回の申請でした。

文献を調べ数字を出すだけではなく、地域の方の懐に飛び込んで、歴史や暮らしを学ぼうとするその真っ直ぐな姿に、多くの人が心動かされました。その頑張りが、今回の素晴らしい展示や報告会につながったのだと感じています。

■ 宿毛の皆さんの「温かい手」に支えられて

このプロジェクトが形になったのは、何よりも宿毛の皆さんの優しさがあったからです。 「昔はここが賑わっていたんだよ」「この家にはこんな思い出があるんだ」と、家族のように学生たちを迎え入れ、貴重な話を聞かせてくださった皆さんに、心から感謝申し上げます。皆さんが語ってくれた言葉の一つひとつが、学生たちにとって、教科書には載っていない一番の「宝物」になりました。

■ 空き家は、ただの「古い建物」ではありません

活動を通して学生たちが気づいたように、空き家は単なる「壊すべき古い家」ではありません。そこには、かつて誰かが商いをし、家族が笑い合っていた、宿毛のまちの歴史がぎゅっと詰まっています。 少子高齢化が進む今、空き家の問題は放っておくわけにはいかない、急がなければならない課題です。だからこそ、今こうして「まちの生い立ち」までさかのぼって、丁寧に向き合い始めたことは、宿毛の未来にとって本当に大きな一歩になりました。

■ 宿毛を想う「若い力」をこれからも

宿毛で育った子も、外から来た子も、こうして「宿毛のこれから」を自分たちのこととして真剣に考えてくれる。その「若い力」こそが、これからのまちづくりに一番必要なエネルギーです。 この活動を一度きりで終わらせず、次の後輩たちへ、そして具体的な「空き家の活用」へとつなげていこうとする姿勢を、私たちはこれからも全力で応援していきます。

宿毛の皆さんと学生たちが作ったこの「輪」が、これからももっと大きく、温かく広がっていくことを楽しみにしています!

(取材:2026年3月)

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